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2018年5月13日日曜日

ダゲレオタイプと湿版写真展

先日、東麻布と西麻布のファインアート系写真展をはしごしたのですが、その延長線上にある池尻大橋のモノクロームギャラリーレインで「容子 展 /  湿板 & ダゲレオタイプ 」を観ることが出来ました。作者・容子さんの初個展とは思えぬ充実した展示です。(6月3日までの土日のみ開廊)

ダゲレオタイプは言うまでもなく最初期の写真技法ですが、銀メッキの光沢に浮かび上がる画像はきわめて精緻で美しく、用意された虫眼鏡や懐中電灯を使うと紙ベースのプリントと一線を画す世界に浸ることができます。
アーティストは古典技法のプロセスが「楽しくて仕方がない」そうですが、選んだ被写体は理科実験器具や人形など、どこか19世紀の西欧を思わせるもので、死の匂いがまつわりついているように思うのは私だけでしょうか。
オープニングパーティに参加した専門家に伺うと、湿版写真に手を染めている人は全世界で1万人にもなるそうで、その広がりに驚かされます。ゼラチンシルバーという工業製品として確立した材料を使うのではなく、すべてを手作りする楽しさゆえにということです。それにもかかわらず、というか、それゆえにというべきか、今回の個展のように確固とした世界を創り上げる人はそう多くはないらしい。

かつて利便性や安定性の故に淘汰された「古典」プロセスが、ゼラチンシルバーの没落によって新たな生命をふきこまれ、復活するのを目の当たりにした次第です。

2018年5月10日木曜日

西麻布から東麻布へ

西麻布と東麻布にある写真のギャラリーで、ファインアート白黒写真の展示が始まっています。どちらも8×10という大型カメラで捉えた風景が主です。

・土居慶司ファインアート写真展 米国西部ランドスケープへの誘い
ギャラリーE&M 西麻布 5月26日まで

 "West coast photographic movement"などと呼ばれ、アメリカ西海岸を中心に発展したストレートフォトグラフィーの直系といえる作品です。作者が力を入れているカーボントランスファーという古典技法は、ゼラチンシルバーとはすこし異なるテクスチャーをもったプリントになっています。
ワークショップも開催されますが、すでに満員ということで、古典技法に対する関心の高さが伺えます。これから夏になって水温が上がると作業が難しくなるそうで、まさに季節限定の技法ですね。
















・原直久作品展「蜃気楼IV」
PGI 7月7日まで

西麻布から歩いて30分余、東京タワーを見上げる東麻布のPGIで、9日から原直久作品展がスタートしました。この日はオープニングパーティで、多くの方が詰め掛けています。
アーティストステートメントによると、うまくいかずにプリントしなかったネガを組み合わせることで新たな表現を手にしたということです。種明かしを教えて頂いて納得できました。
「写真の神様が手助けして微笑んでくれたのではないか・・・」と、謙遜しておられますが、ぎりぎりまでの努力があってこその発見でしょう。






ストレートな作品も見事で、カリフォルニアのポイント・ロボスかと思いきや九十九里浜が舞台なのだそうです。

こうしたファインアートの写真を扱うギャラリーが増えることを願いつつ麻布の街を後にしました。