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2016年7月28日木曜日

アルバレス・ブラボ写真展

 マヌエル・アルバレス・ブラボという写真家については、写真集を一冊眺めた以外、あまり詳しいことは知りませんでした。 写真集からは陰惨な死のにおいが漂ってくるので、それ以上は深く知りたくもなかったというのが正直なところでしょうか。

 世田谷美術館で開かれている写真展は、200点近い作品をほぼ年代順に章立てし、この写真家の業績を一堂に見ることができます。 かなり膨大な量ですが、ほぼ8×10のプリントを端正に額装して展示してあるので、落ち着いた雰囲気で鑑賞することができました。

 意外だったのはアジェの影響を強く受けているということ。「日々の生活をシンプルに撮ることのなかに潜む魔術」を重視していたというのです。 そういえばアンドレ・ブルトンやトロツキーのポートレートも撮っていように、政治的・芸術的な革命の時代が人間形成に強く影響しているのかもしれません。
 「シンプルな手立てを通して得られる複雑な現象の表現」という言葉も書かれていることから、キーワードは「シンプル」なのでしょうか。
 代表作である、包帯を巻いて寝ている女性を撮った「眠れる名声」は、11×14というサイズで改めてみると飽きることがありません。 同じモチーフで多重露光したと思われる「名声2」は初めて見ましたが、シンプルな表現の陰にある試行錯誤を垣間見る思いがします。 残念なことにどちらも絵葉書はありませんでした。

 最晩年では、同じ場所から撮ったと思われる庭の連作などが静かな世界を現出しています。

 作品の多くは暗い色調でプリントされており、明るい光で照らされた光景もどこか陰鬱な雰囲気に包まれています。
 観終わってから地下のカフェに入りました。 BGMで明るいメキシカンが流れているのがどこか能天気で場違いな感じがします。そんなことを考えながら注文したブリトーをほお張ると、中のほうはしっかり冷たいままでした!

2016年7月25日月曜日

シャンブル・ノワール展

7月24日 日曜の午後、暗室を意味する「シャンブル・ノワール」展の最終日にお邪魔しました。

目黒区美術館の区民ギャラリーというゆったりしたスペースで、同じ写真学校で学んだという人たちがそれぞれのスタイルで白黒写真を展示しています

18人のメンバーが八十余点を展示したそうで、大変見ごたえがありました。 35ミリによるスナップショット、ルポルタージュから中判による風景や静物、人物など内容は多彩で、白黒写真ということだけが共通点であるようです。 しかし、決してちぐはぐな印象にならず、レベルを維持しているのは先生の選択眼によるところが大きいと思われます。

新入会員の大野さんはスタジオ撮影のヌードを出品。 他にも人物を正面からとらえた作品が目立ちました。











そのほか、新宿御苑 蒼穹舎の斎藤純彦写真展 「Homeward」も、6×7で静かに切り取った何気ない風景が印象に残りました。

銀塩写真を愛し、自分の表現手段として使う人がまだまだ多いことに勇気づけられます。

2016年7月18日月曜日

田中寛二写真展 TOKYO

 東海地方まで梅雨明けした暑い日、板橋区の大山で開かれている田中さんの写真展にお邪魔しました。 個人的にはこの辺りは詳しくないのですが、かつて板橋は多くのカメラや光学器械メーカーが集まっていた土地柄でもあります。

 会場のUP40ギャラリーは大山駅から徒歩1分という近さ。立派なポスターが出ていて迷うこともありません。

 こじんまりしたギャラリーには、東京という巨大な都市の様々な相貌をシャープにとらえたプリントが並んでいます。

 人間がほとんど見えないビルやガスタンクなどが印象に残りますが、それでいて無機質ではなく、どこか懐かしい印象があるのは、写真家の人柄と、豊かなトーンの白黒プリントによるのでしょうか。
 イメージに合う視点を求めて、ビルの非常階段などから撮るというバイタリティーにも感心します。


一緒になったKさんと3人で、気が付くと1時間近くもおしゃべりをしていました。