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2023年12月26日火曜日

「前衛」写真の精神

 「なんでもないものの変容」とサブタイトルのついた展示を観ました。(松濤美術館 2024年2月4日まで)

アジェや、シュルレアリスムから影響を受けた戦前の前衛写真をはじめとして、戦後の大辻清司、牛腸茂雄などが並んでいます。今年が生誕百年となる大辻と、その教え子である牛腸の作品がメインとなっているようです。

わざわざ「前衛」とカッコに入れたのは、とくに牛腸をそう呼ぶのに違和感があるからでしょうか。

大辻が名付けたという「コンポラ」は「プロヴォーク」と並んで1960~70年代の現象でしたが、「前衛」という戦闘的な言葉とは相いれないように思えます。

「なんでもないもの」を何でもないように表現するのは、意識的に無意識を装うような努力が必要なことなのでしょう。

ぼんやりとそんなことを考えながら美術館を出て、師走の渋谷の街を歩くと、見慣れた街がどんどん変容していく様を目の当たりにします。

2023年12月14日木曜日

第27回写真展 終了

 アイデムフォトギャラリー シリウスで開催した写真展も、12月13日にぶじ終了しました。

今年の展示では、作品のほかW会員が考案した「ビューイングフィルター」を新たに販売して好評でした。

「ビューイングフィルター」は、ゾーンシステムで大切な「ビジュアライズ(撮影するときに、プリントした写真がどのように見えるかをあらかじめ考えること)に便利な道具です。市販品はラッテン#90フィルターを使い、これを透すと実景の色彩が弱められ、白黒プリントに近いイメージで見られるというものです。しかし最近は極めて高価で入手しづらくなっていました。
Wさんの創意工夫で、安価に再現することに成功したのです。

また、昨年同様「ゾーンシステムテキスト」も好評で、用意した20冊は完売しました。

銀塩白黒写真に興味を持つ人がまだまだ健在であると実感できた1週間でした。

2023年12月9日土曜日

井津建郎 祈りのかたち

 小伝馬町 Roonee247ファインアーツで終了間際の写真展を観ました。

題材にふさわしくやわらかいトーンのプラチナプリントで、ブータンの寺や、そこで祈る子供たちを捉えています。

こちらを見つめる子供たちの表情は、日本の原風景といってもよいほど親しみがもてるものばかりでした。写真家の前でしばらく緊張し、撮り終わってからはほっとする様子が想像できるようです。

数年前に観た同じ作者の「Eternal Light」は、ゼラチンシルバープリントの深い階調で描かれた終末の物語でしたが、こちらは暖かい表現で、未来への希望が感じられる展示でした。