このブログを検索

2025年8月31日日曜日

印画紙の定着プロセスの改善

 


8/31と言えば、小学生時代、宿題が終わらずヒーヒーしていた頃を思い出します。小学生の宿題で難関なのは読書感想文と自由研究ですが、数十年ぶりに自由研究っぽいことをやってみましたので発表させていただきます。

■タイトル

印画紙の定着プロセスの改善

■印画紙の定着に関する私の課題

     課題1)定着液のバットに印画紙をためがち。定着液の成分が印画紙に浸透して残留することを恐れて、水洗時間が長くなりがち。
     課題2)1回の利用で2L使うが、2Lで処理できる処理限度(8x10バライタ80枚)に達することはめったにない。
    課題3)処理限度に達していないので印画紙用定着液を印画紙用現像液のように使い捨てせず繰り返し使用している。
    課題4)いつのまにか劣化して白色結晶が沈殿している。使えないことはないが、気分が悪い。
    課題5)薬品持ち込みのレンタル暗室(時間課金)を使っているため、薬品量は少なく、使用時間も短くしたい。

■定着液の処理能力/保管期限についてのメーカー見解のおさらい

私がつかっているのは中外写真薬品のシルバークロームラピッドフィクサー(SC-RF)です。名前のとおり迅速タイプです。また、硬膜剤が入っていない酸性硬膜なしタイプです。データシートは[参考文献3]のwebにあります。

データシートからバライタ(FB)印画紙について抜粋

----
希釈: 1+4
処理温度℃:18-24
処理時間(分):1
処理能力 8x10枚/L :40(参考 RCは80なので、RCの半分しか使えないという話しです)
----

保管期限の記述はありませんが,濃縮液での保存期限はタンクに印刷されています。濃縮現像液に比べ短めです。

プリントの保存期間を考慮した1Lあたりの処理能力の記述は[参考文献1]の27ページ表12にあります。以下に抜粋します。
それには定着液の処方についての記述はありませんが、一般的に当てはまると仮定するとメーカーの処理能力は2浴の10年から100年の間を前提にした値だと考えられます。
100年保存を目指すなら、メーカー提示の半分の能力と考えるとよさそうです。

----
印画紙(キャビネ)1浴処理 数年以上保存 60枚、10年保存 20枚、100年保存 4枚
印画紙(キャビネ)2浴処理 数年以上保存 120枚、10年保存 120枚、100年保存 40枚
----

保存性についても参考文献1の27ページ表13に記述があります。コダックの処方についての記述しかありませんが抜粋します。

----
迅速タイプであるF-7,ATF-5についてみると、新液を瓶に入れて密栓という条件だと18℃保存だと2月~3月、24℃保存だと2週間です。
----

高温に弱い性質があるようです。昨今夏は酷暑が普通なので、24℃を基準に考えたほうがよさそうです。[参考文献1]の28ページに保存性について、以下のような記述がありました。引用します。

----
「チオ硫酸塩が分解し、硫黄を分離して白濁」「液温が高いと、チオ硫酸塩の分離は非常に促進される」「液のpHが低いほど分離されやすくなる」。
----

■課題を解決するための仮説

仮説1 [課題1]1枚ずつ処理すればいいんじゃないか? でも定着完了まで次の露光に取りかかれずリズムが崩れるため、停止バットに溜め、明室での濃度判定は停止バット行う。[課題1,5]水洗を短時間済ませるため、定着は既定時間処理し定着バットに印画紙を溜めなければいいのでは?

仮説2 [課題2,3,5]元々濃縮液を希釈しているが、さらに希釈し濃縮液の使用量を減らせばいいんじゃないか?処理時間が伸びると思うが、既定の1分が倍になる程度なら我慢できる範囲?

仮説3 [課題4]24℃で2週間しか保存できないならあきらめるしかない。定着液を捨てるしかない。

■仮説についての検証

仮説1について
1)検証1の内容
停止で明室にしても印画紙の白色部分の濃度に影響しないことを確認

2)検証1の結果
まったく問題なし

3)検証1の考察
実はこれは予想とおりでした。[参考文献2]の58ページ以降に大丈夫と書いてあったからです。作者が感材メーカーの担当を追求して、担当がしどろもどろになるくだりは必読。

仮説2について
1)検証2の内容
基本的なやり方は[参考文献4]と同じ。印画紙の定着が終わったかは見えないため、未使用フィルムを使ってフィルムが透明になるまでの時間を測ります。

[共通条件]
使用フィルム
ローライ オルソ25plus(未使用8x10シートフィルムから明室で小さい短冊を沢山つくった)フィルムの銘柄はたまたまあったという理由で選んでいるが、透明なベースで分かりやすく、結果的によかった。低感度フィルムのハロゲン化銀の種類はAgBr,AgCl,引伸し用印画紙も同じなので、低感度フィルムをつかったのはそういう理由もあります。

定着液
シルバークロームラピッドフィクサー(SC-RF)

液温
23℃

[パターン1 新液の能力測定]
1+4希釈で定着液を100ml作成、フィルムが透明になる時間を測定、4回測定

[パターン2 新液希釈時の能力測定]
1+9希釈で定着液を100ml作成、フィルムが透明になる時間を測定、4回測定

[パターン3 疲労液の能力測定]
処理能力は1LあたりRC 8x10 80枚です。半分の能力まで使うことを想定して、1Lあたり40枚、すなわち100mlあたり4枚を通常プロセスで処理して疲労液とします。ただし、定着液だけは1+4希釈の定着液を100mlで処理します。それ疲労液とします。4回測定

2)検証2の結果

パターン1
1回目 29秒 2回目 24秒 3回目 27秒 4回目 32秒

パターン2
1回目 31秒 2回目 2分32秒 3回目 2分20秒 4回目 2分26秒 ※1回目は結果がおかしいので、除外

パターン3
1回目 1分12秒 2回目 1分33秒 3回目 1分35秒 4回目 1分40秒

3)検証2の考察
パターン2の結果から、迅速タイプなのに処理時間が5倍になるとは、、、時間的に駄目だ。
[参考文献1]の26ページに定着剤の濃度が低くなると濃度1/2が時間2倍という比例ではなく急激にヌケの時間が増えていくというグラフが載っていますが、まさにこれです。定着液を薄めて、能力を使い切ろうという作戦はダメということです。
定着液の量自体を少なくすることが必要です。そのためのやり方としては少ない容量で常時攪拌しながら1枚ずつ処理することがよさそうです。

パターン3は疲労した定着液では通常の3倍程度の時間がかかるが定着はできるということを意味しています。[参考文献4]でも同じようなことが書いてあります。2浴定着では第2を新液、第1を旧液で行うと説明しているものが多いが、旧液での処理にかかる時間を考えると、レンタル暗室での時間を短くしたい私には逆のほうがあっていそうです。

仮説3について
これについては捨てるだけなので、特に実験不要。本題とはずれるが、捨てる時はペット用のシーツに定着液を吸わせ、天日乾燥してから燃えるゴミとして捨てる方法がよさそうです(研究会の鈴木さんに聞いた)。

■まとめ

課題を解決するために、いくつか仮説を立てて、仮説によりプロセス改善できるか検証を実施した。プロセスの2)~6)を以下のように改善することで課題が解決できそうなことが確認できた。

[検証に基づく私の印画紙(バライタ(FB))処理の新プロセス]
※一度のレンタル暗室利用でバライタ(FB) 8x10 20枚を処理することを前提。

1)現像 容量2L 3分(通常より長いが日大の服部先生に黒の濃度が違うと言われたので)

★2)停止 容量2L 1分以上 (作業のキリがいいところまで溜めておく、濃度判定はここで明室にして行う、必要なら暗室にして露光からやり直し)

---以降から明室---

★3)予備水洗 2~3分(キリがついたら、大きめバットでまとめて処理、停止液持ち込みによる定着液のpH低下を防ぐため)

★4)第一定着 容量1L 新液1分(既定と同じ)※明室で1枚ずつ、溜まっているものを全部処理する

★5)予備水洗 2~3分(大きめバットでまとめて処理)

---レンタル暗室の処理はここまで、自宅に持ち帰り---

★6)第二定着 容量1L 4)で使ったものをペットボトルに入れて持ち帰り3分処理(既定より長め)
※明室で1枚ずつ処理する,これで廃棄
※3分処理なのは検証2の結果を反映
※第二を新液、第一を旧液で行うプロセスが一般的だと思うが、濃縮液を暗室のロッカーに保管、廃棄を自宅で行うことを考えると、前者の方法だと自宅、レンタル暗室間の液体の運搬が多くなる。これを避けるため、第一を新液、第二を旧液としている。

7)予備水洗 2~3分

8)QW 10分 (無水亜硫酸ナトリウム3%)

9)本水洗15分

10)保護調色 1~3分

11)水洗5分

■参考文献

1.写真工業出版社 笹井明 写真工業別冊 最新写真処方便覧
2.朝日ソノラマ 中川一夫 現代カメラ新書No.8「現像引伸のうまくなる本」
3.中外写真薬品 webサイト データシート
  https://www.chugai-photo.co.jp/app/download/12080828691/TDS_SILVERCHROME_FILM_CHEMICALS_JP.pdf?t=1714544552
4.シルバーソルト webサイト 定着液の消耗度テスト
  https://www.silversalt.jp/index.php?main_page=page&id=4&language=ja


2025年8月25日月曜日

ゾーンシステムのTシャツ

 写真展にゾーンシステムをデザインしたTシャツを着た方が来られました!

20世紀末で廃刊になったアメリカの Darkroom & Creative Camera Techniques という雑誌が作ったそうです。ZONE 0からXまで、ユニークなイラストと解説が書いてあります。

その雑誌には"Bokeh" の解説記事があったり(多分英語圏で最初)、ウイン・バロックが、ゾーンシステムに関して、アンセル・アダムスを怒鳴りつけたエピソードとか(曰く「おれは実験がやりたいんじゃない。写真が撮りたいんだ!」)が載っていて面白い雑誌だったそうです。

そういえば、バロックがアダムスに「君はなぜ切株の写真に『切株』というタイトルをつけるんだ?」と言ったとか、エピソードには事欠かなかったようですね。

研究会が発足した当時は、アナログ写真という技術で、いかにクリエイティブな表現を達成するか、多くの人が研究し工夫をこらしていた時代だったとしみじみ思えます。





2025年8月23日土曜日

ゾーンシステム研究会 30周年記念写真展

8月22日から30周年記念写真展が始まりました。23日(土)の午後には中島代表によるギャラリートークを行い、多くの方が参観されました。

 

2025年8月13日水曜日

ルイジ・ギッリ 終わらない風景

 お盆休みのさなか、都写美のルイジ・ギッリ展に出かけました。さぞかし空いていると思いきや、入り口ではまさかの行列! ほかにも展示があるので、すべての人がギッリを観るのではないのですが、記憶の限りこんな行列は初めてです。20分ほど並んで入場出来ました。

正直なところ、ギッリという写真家についてはほとんど何も知りませんでした。たまたま目にしたパンフレットの写真がモランディの絵画のような静けさを湛えていたので興味をひかれたのですが、まさにモランディのアトリエを撮った作品でした。

彼の写真を観て行くと、人物は殆ど後ろ向きに撮られています。解説を読むと「展示物を見つめる人、その人を背後から撮影するギッリ、ギッリが撮影したイメージを見る鑑賞者・・・」という視線の連鎖が表現されているそうです。

会場では、作品1点をアップにしなければ撮ってもよいので、ギッリの作品を鑑賞する人を背後から撮ってみました!



2025年7月1日火曜日

写真展のプロモーションビデオ

 研究会30周年記念の写真展が8月22日から富士フイルムフォトサロン(六本木)で開催されるのに合わせて、プロモーションビデオを作ってみました。


初めての試みで1分半の簡単なものですが、効果のほどはどうでしょうか?

ちなみにBGMはDova-Syndromeのフリー素材から 蒲鉾さちこさんの「波打つ鼓動」をつかわせてもらいました。落ち着いたピアノの響きが写真にマッチしています。

2025年4月27日日曜日

「写真は死んだのか?」

― いまこそ写真の純粋な驚きを語ろう― というサブタイトルの本を読みました。飯沢耕太郎・大山顕氏の対談で、書店で見つけて早速購入しました。(梓出版社・税別2500円)

ニエプスの時代から生成AIまで、語られる範囲が極めて広いのですが、その広範な話題は生成AIによる画像生成を論ずるための下地なのでしょう。以前読んだ甲斐義明著 「ありのままのイメージ」と並んで、写真について新たな視点を与えてくれる刺激的な本です。

「写真は死んだのか?」というタイトルは、19世紀に初めて写真を目にした画家が「今日から絵画は死んだ!」と言った故事からとられたのでしょうが、そのご200年近くたっても絵画は死んでいないのと同様、写真は死なないというのがこの本の結論です。その結論にたどり着くまでの論考がたいへん興味深いのです。

生成AIは画像をコラージュして出力するだけであり、写真を撮ることを楽しむのは人間にしかできないという、いわばまっとうな指摘もうなづけます。

また、著者の一人である大山顕氏についても認識を新たにしました。いままでは「工場萌え」や「ジャンクション」のような写真集の作者という程度でしか知りませんでしたが、飯沢氏と互角に写真を論じる論客だとは、失礼ながら初めて知りました。

***

ところで、本書を読みながら「なぜカメラオブスキュラの画像が魅力的なのか?」という積年の疑問が頭をもたげてきました。大判カメラのピントグラスを眺めているだけでも飽きないのはよく経験するところです。写真の発明はカメラオブスキュラの画像を定着したい、という欲求から行われたのですが、現実世界と変わらない(むしろ薄暗く、三次元が二次元に圧縮されている)画像に惹きこまれるのが不思議です。素人考えですが、私たちの脳が画像処理するとき、現実世界より二次元画像の方が楽だからなのでしょうか?



2025年4月17日木曜日

新緑撮影

 4月も半ばを過ぎ、近所の公園の新緑も美しくなってきたので撮影に出かけました。

グリーンフィルターがあればよいのですが、手持ちのレンズに合うものがないので、とりあえずそのままで撮影。古いTMAX400の実効感度EIを100としたので、昼下がりの条件でもシャッターは2秒ほどになります。

2025年3月28日金曜日

岡崎正人作品展 A PERSONAL SELECTION 1980-2020

 雑司ヶ谷に今年オープンしたという真新しいS3 Gallery で岡崎正人氏の写真展を拝見しました。ギャラリーは鬼子母神の近くで、どこか昭和の雰囲気を感じさせる街のなかにあります。
(オープンは毎週金曜から月曜日までの4日間。土曜日の15時からは展示作以外のポートフォリオを作者が見せるというビューイングもありますが、予約が必要。)

「表現の極北」というコトバがあります。極限に達することを表すのでしょうが、岡崎さんの写真を見ると、このコトバが頭に浮かびます。

ゼラチンシルバープリントで表現できる光の表現を極限まで追求した作品ばかりです。乾いた泥や氷が見せる抽象的なイメージや、雪に閉ざされた景色などが、撮影とプリントに費やしたエネルギーを感じさせます。

前回お邪魔したのは3年前の個展で、このときはピンホールの表現でしたが、今回はいつもの(?)シャープな作品です。


2025年3月19日水曜日

写真展巡り 西麻布・表参道・六本木

 3月も下旬近く、東京は朝から雪が降り、雷もなるという天気になりました。それでもいくつかの写真展を拝見してきました。いずれも白黒プリントばかりです。

古谷津純一写真展 東へ西へ (ギャラリーE&M西麻布)

このところハイペースで個展を開いている古谷津さんの展示です。前回からほぼ1年たちました。

6×6のスクエアフォーマットで統一した写真が並んでいます。それに倣って会場風景もスクエアにしました。

ステートメントは「(光景から)放たれた光の粒子は、秒速約30万kmの速度でフィルムに塗布されたハロゲン化銀に衝突し、潜像を形成する・・・そして自身の脳神経細胞に感動として記憶される・・・」と、きわめて学術的な表現になっています。なによりも、感動をもたらす光景を発見する能力こそが大切だと実感させられます。印画紙という紙に、漆黒の闇と光を記録する醍醐味が味わえる展示です。


服部一人写真展 パノラマ・東京・ミレニアム (ギャラリーストークス)

1999年から2000年にかけて、東京都内を6×12というフォーマットで撮り歩いた記録だそうです。何と手持ち撮影。四半世紀という時間を隔てて見ると、まだ昭和の雰囲気がのこっていて懐かしくなります。

← 作者とギャラリーオーナーの2ショット。作品に合わせてパノラマにしました。

吉良俊一写真展 もうひとつの影 (富士フイルムフォトサロン 東京)

デジタルカメラで撮影し、「銀プリント」に仕上げた作品だそうです。ビルの窓などに映った影を、抽象的なフォルムとしてとらえた作品が魅力的です。タイトルパネルはアクリル板に印刷したものを壁から5cmほど浮かして掲示し、その「影」を見せるという凝った仕掛けでした。

会場を出ることには、天気もすっかり回復していました。



2025年3月7日金曜日

都市の撮影(新宿)


 研究会のテーマ「都市」を撮っています。

渋谷ほどではないにしても、新宿もどんどん変化していきます。シャッターの調整が終わったワイドフィールドエクターで撮り続けています。

人通りの多い所なので、よく声を掛けられます。研究会を紹介する名刺サイズのパンフレットを渡していますが、今日はフィルムカメラ(35mm)で日本を撮り続けているというカメラマン氏と、ネパールから来たという日本語の上手な方とお話が出来ました。



2025年3月2日日曜日

CP+ 2025

 20℃を越える暖かな陽気となった3月2日、CP+の最終日に足を運びました。

さぞかし混雑していると思いきや、それほどのこともなく、かえって寂しさを覚える程です。みなとみらい駅からパシフィコ横浜まで、かつては切れ目なくバナーが並んでいたのですが、久しぶりに?きてみると、会場付近にちらほら出ている程度でした。それもキヤノンのプライベートショーかと勘違いするようなものしかありません。

銀塩写真関係の展示は無いものと思っていたのですが、富士フイルムには「ハイブリッドインスタントカメラ」と銘打ったインスタックス・ワイド・EVOなるカメラが出展されています。「デジタルポラロイド」という方がぴったりくるかもしれません(もちろん言いませんが・・・) シャッターを押してから数秒で写真が取り出せ、数十秒経つと画像が現れます。画面サイズは約6×10センチ(右の写真)

20年以上昔にも同社で同じコンセプトの製品があったと記憶しますが、カメラから写真が顔を出すまでが延々と長く、たとえば数人で記念撮影して皆に配る、などという事は出来そうにない代物でした。技術は進歩するものです。

他にも台湾製フィルムスキャナーの新製品があるなど、銀塩関係もまだすこしは生きているようでした。

2025年2月24日月曜日

川村賢一写真展 Once Upon a Time in America

 この数日、半世紀前のフィルムから作った写真展を観る機会が続きましたが、今日はJR三鷹駅近くの「ぎゃらりー由芽のつづき」で川村賢一写真展 Once Upon a Time in America を拝見しました。

お話によると1980年の一か月間、アメリカ東部をグレイハウンドバスで撮り歩いたということです。建築士である作者の視点は構成的でスキがなく、見事です。また街角のスナップショットの一瞬の切り取りが、いかにもこの時代を感じさせるものになっていました。

膨大なフィルムをスキャンして過去の作品をよみがえらせ、こうして展示することも重要になってくると感じた次第です。


2025年2月23日日曜日

慶応大学カメラクラブOB 三人展など

 JCII地下のクラブ25で開催中の写真展にお邪魔しました。出展者のおひとり・伊藤さんが、以前研究会の写真展に来場いただいたご縁です。

他の方はデジタルカメラで撮影しているなか、おひとりだけ銀塩フィルムで撮影し、それをスキャンしてプリントしているそうです。

「街の記憶」をテーマに、表通りからは見えない、ひっそりと佇む風景をとらえています。令和になってから撮られた写真も、懐かしく感じるのがフィルムならではなのでしょう。

片隅には50年前のネガからプリントした作品も少し展示されていましたが、かなりビネガーシンドロームに侵されてしまっているそうです。


半蔵門を辞してから表参道のギャラリーストークスで鈴木孝史先生の展示に伺いました。鈴木先生も半世紀前のネガからプリントしておられましたが、コダックのフィルムは殆どビネガーシンドロームを発症しないとか。

今更わかっても、あとの祭りです・・・



2025年2月5日水曜日

ワイドフィールドエクターの修理

 10年近く前に入手したワイドフィールドエクターは、シャッターが相当くるっていましたが、夕景などで長時間露光が多くだましだまし使っていました。

最近、昼間も!撮ることが増えてきたので、意を決して調整を頼みました。以前は九段下にあったTOYOカメラサービスですが、最近移転されたようです。

宅配便で送って待つことしばし、調整が出来てきました。これで安心して撮影できます!

調整前は相当狂っていました。とくに1/2秒や1秒はバルブになるありさまでした。 内部は相当さびていたそうです。
もともとシャッターレバー先端の小さな指あてが欠損していたのですが、戻ってみるとちゃんとついていました! 感謝!


2024年12月14日土曜日

建て物写真展

 JCIIクラブ25で開催の第20回「建て物写真展」に、閉館間際にお邪魔しました。

国宝や現代の作品など国内外のさまざまな建築物を、どれもストレートにとらえた作品です。建築をテーマに20年も続いているという、グループの息の長さも驚きです。

建物を記録する面白さは、形への興味にとどまらず、時間の経過にも目が向けられることでしょうか。
古代ローマのパンテオンは、最古のコンクリート建築だそうで、現代のコンクリートがせいぜい百年程度の寿命なのに対し、2000年を経ても強度を保っているそうです。そんな蘊蓄をききながら写真を見ると、いちだんと興味が増します。




以前会員だったK氏は、4×5からスキャンした巨大プリントなどを展示しています。



2024年11月27日水曜日

髭おやじとゆかいな仲間たち

 ギャラリーストークスで開催中の写真展にお邪魔すると、そこは路面電車の線路になっていました!

さすが日芸写真学科卒業生の鉄道愛好会写真展だけあって、写真だけでなく展示も凝っています。


髭おやじ先生も楽しそう。模型を見て誰もが童心にかえっています。

お話をしていると、髭おやじ先生も私も、玉電最後の日に写真を撮りに出かけていました。子供のころからニアミスしていたのかもしれません。

2024年11月26日火曜日

泉大悟写真展 GELATIN SILVER

 11月23日、池尻大橋のモノクロームギャラリーレインで開催中の写真展にお邪魔しました。

泉大悟氏の展示を拝見するのは2回目です。(前回は2020年でした) 今回はガラスの器など、室内と思われる情景も多くなっています。

いわゆる「静物写真」が多いので、スタジオで撮ったものかとお聞きしたら、自分で被写体を構成したのではなく「見つけたもの」だ、というご返事でした。
改めて拝見すると、モノから「撮ってください」と呼びかけられているようにも思えます。モノの気配を感じるのでしょうか。その感性による静謐な表現が魅力です。

前回はハマースホイを連想しましたが、モランディにも通じるものを感じました。

帰り道、駒場東大前駅まで歩くと「駒場祭」にあわせて急行も臨時停車するなどごった返しています。お気に入りのパン屋さんに寄ろうかとも考えていましたが、ついさきごろ「アド街ック天国」で紹介されたこともあり、諦めました。

2024年11月25日月曜日

ゼラチンシルバー乾板ワークショップ

東京のアトリエ シャテーニュ( http://atelier-chataigne.org/ )で開催された、ゼラチンシルバー乾板ワークショップに参加しました。

乾板作成の座学、ガラスの下処理、乳剤作成(デモ)、乳剤塗布・乾燥、撮影(4x5)、現像といった一通りの工程を学ぶ濃厚なワークショップでした。

他の方は貸し出しのホルダーを使いましたが、私は3Dプリンタを持っているのでインターネットに公開されている湿板用ホルダーの3Dモデル(一部私が設計した追加部品あり)を印刷・組み立てして撮影に望みました。3Dプリンタ製のホルダーがきちんと機能することを確認できました。3Dプリンタ製のホルダーの情報の情報は以下のweb(英語)を参照してください。

https://www.thingiverse.com/thing:6845540

★ワークショップの内容については12/2以降に追記します★


2024年11月20日水曜日

SAMURAI FOTO と Shibuya Photo Archive 2024

 かなり傾向の異なる二つの写真展を観てきました。

SAMURAI FOTO 写真展 Transcendence / 超越

六本木ストライプスペースの展示は、デボラ・クロチコさんのキュレーションによるものだそうです。サンディエゴ写真美術館館長(当時)の同氏が2012年に来日してレクチャーをした折、中島代表が研究会の「ポートフォリオ1」を寄贈したというご縁もあるので興味を惹かれました。(詳細は会報53号の記事)

グループ展というよりは15名の個展の集合体というべきでしょう。それぞれの作品には詳細なステートメントが書かれたパンフレットが置かれ、作者の狙い、思いなどがつづられています。作品の表現や形態も多種多様です。

以前からたびたび拝見してきた千代田路子さんの作品は、被写体から受けた印象を再構成したというより、ご自分の思いを被写体に託して編集したというべきかもしれません。(今回はお会いできず残念でした)

会場で詳しく説明していただいた村田光司氏の作品は、仏教の世界観を日本画のように表現したものでした。

海外での販売、収蔵してもらえる作品創りを目指す志の高さと真剣さを感じる展示です。


これとは対照的に思える展示が ヒカリエで開催の Shibuya Photo Archive

1947生まれの作者が遺した数千本という膨大なネガから選ばれた、1960年代から80年代の渋谷の街頭風景が展示されています。団塊世代には懐かしい渋谷の風景を、若い人たちも興味深そうに眺めています。

大学のカメラクラブ員だったという作者がどのような狙いで撮影したのかは説明もありませんが(没後にネガが見つかったのだそうです)、撮影者の意図とは関係なく多くの人に伝わる写真もあるものだと改めて感じました。そして、その記録を発掘して後世に残す努力も貴重です。

これだけ膨大な写真があれば、半世紀前の風景をバーチャルに再構成して体験できないものか、そんなこともぼんやり考えながら眺めていました。





2024年11月14日木曜日

ステレオ&パノラマカメラの歴史展

 日本カメラ博物館で開催中の展示を観てきました。

立体写真は写真の誕生と同時といってよいほど古くから試みられてきたようです。現代でも何年かおきにブームとなりますが、いつの間にかフェードアウトするのが運命かもしれません。

で、私が興味を持ったのはパノラマ写真の最初期に現れた「サットン パノラミックカメラ」です。まだロールフィルムのない時代、湾曲させた感光材(湿板だそうです)を使う斬新な構造でしたが、その材料が謎でした。撮影時には湾曲させた感光材料も、プリントする時には平面にする必要がありそうです。東京都写真美術館の文献によればマイカ(雲母)を使ったという推測があるのですが、詳しくはわかっていないようです。

博物館にはカメラの実物が展示してあり、意外と小さいのにすこし驚きました。しかし感光材料の説明はないので、その点がすこし物足りなく感じた次第です。

いずれ私達もまた、感光材料を自作する必要に迫られるかもしれませんね・・・