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2020年12月16日水曜日

石元泰博「伝統と近代」、井津建郎「Eternal Light」

 東京も冷えてきた一日でしたが二つの写真展を廻りました。どちらもゼラチンシルバープリントの表現を極限まで突き詰めたプロフェッショナルの作品です。

石元泰博「伝統と近代」 (東京オペラシティアートギャラリー)

都写美と並んだ生誕百年記念展もいよいよ終盤。作家の造形力に圧倒される展示です。桂や伊勢神宮といった大作より、初期の金網などをモチーフにした多重露光作品などにすごさを感じました。
最後の年譜には師であるハリー・キャラハンを囲んだ、石元やメツカーたちの写真があり、ニュー・バウハウスに集まった作家たちの共通の美学を改めて感じた次第。

新宿から御茶ノ水へ。学生時代から通いなれた聖橋口がすっかり変わっていてまごつきました。
で、ギャラリー・バウハウスの井津建郎「Eternal Light」展へ。

インドで撮影した生と死のポートレートともいうべき写真群です。幸運にも作家が在廊しておられ、いろいろとお話を聞くことが出来ました。
これほど深い黒の表現がどうすれば可能なのか、いささかぶしつけな質問をしたところ、フィルムや印画紙は市販のものだが、特殊な印画紙現像液を使っておられるとのこと。ネガを見てからプリントを仕上げるまで、せいぜい1~2枚焼けば自分のイメージになるという、神業のようなことをさらりとおっしゃる。「経験を繰り返せば、あるとき自転車に乗れるようになるのと同じくらい簡単にできるようになる。」とも。うーむ。



2020年11月18日水曜日

千代田路子写真展 「私は彼女と長い夢をみる」

 六本木アマンドの角を曲がり、芋洗坂を下ったところにあるストライプハウスギャラリーを初めて訪ねました。千代田路子さんの写真展を拝見するのは昨年に続いて二度目ですが、今回は広島にあるという修道院を舞台にした作品群です。(11月20日まで)


 

写真はすべてスクエア、展示も左右対称を意識しているようで、深い祈りと敬意が伝わってきます。
修道院の写真というと奈良原一高の「王国」を連想してしまうのですが、ここでは黙想する人の視点が中心となっているようです。
お経のように折りたためる写真集も、内容にマッチしています。
ギャラリーの外観もおしゃれです。

西麻布のギャラリーE&Mまでは歩いて20分ほど。午後の当番に間に合いました。

2020年11月12日木曜日

石元泰博 ヴィヴィアン・マイヤー

写真展の会場であるギャラリーE&M西麻布から徒歩圏?にある二つの写真展にいきました。

東京都写真美術館では、入り口で体温チェックを受けて入場。石元泰博の写真は何回観ても新たな発見があります。例えば「シカゴ こども」と題されたシリーズのNo.6は、着飾って星条旗を持つ黒人少女、それをちらっと見おろす白人女性の視線、そして石元の視線は交わらない。1960年という時代は今以上にこの視線は離れていたと思われるのですが、本質は今も変わっていないようです。それにしても作者の瞬間的な造形力は圧倒的です。

さて、6時で我々の写真展がクローズしてから、骨董通りを少し歩いてヴィヴィアン・マイヤー日本初個展と銘打たれた「Self portraits」(11月28日まで)へ。会場はAkio Nagasawa Gallery Aoyamaで初めて行く場所です。写真展の看板も出ていないので、まさに知る人ぞ知るところ。

ヴィヴィアン・マイヤーは数年前に突然有名になった伝説の写真家ですが、そのプリントを観るのは初めてです。作者自身も(おそらく)プリントをしていないにもかかわらず、どうしてこれだけの作品を生み出すことが出来たのか驚異的です。

石元とマイヤーはほぼ同じ時代にアメリカの市井を撮影していますが、もちろんお互いを知っていたはずはありません。そこにはどこか共通した視点が感じられるようです。


2020年11月10日火曜日

写真展スタート

11月10日からいよいよ写真展が始まりました。今年は残念ながらオープニングパーティも、そしてギャラリートークもできない事態となってしまいました。

快晴で急に寒くなりましたが、多くのかたにご来場いただきました。






2020年11月9日月曜日

写真展搬入

11月8日、研究会のメインイベント・写真展の準備を行いました。

レーザー水準器を使うと、額の展示も効率的です。
感染が懸念される季節となったので、使い捨て鉛筆などで対策しました。

展示作業も2時間ほどで終了しました。
いよいよ10日火曜日からオープンです。


2020年10月26日月曜日

写真展巡り

秋晴れのさわやかな土曜日、都内のギャラリーを巡りました。

まず、PGIの圓井義典展「天象(アパリシオン)」。日常のなにげない風景と、意味ありげな花のアップが並んでいます。ギャラリーの解説には「事物と作者の関わりの結果としての画像の羅列、一般的な意味に交換できないスナップショットの連なりに、見ている私たちは知らず識らずそこから一つの意味を見出そうとするはずです。」とあります。写真一点ずつではなく、そのつながりを読み取ることが求められているようです。かなり難しい・・・

麻布十番駅から四ツ谷に出てポートレートギャラリーの「トリプレットの会」展。三枚組のクラシックなレンズで三人の作家が撮影したゼラチンシルバープリントが並んでいます。都会の中で、木漏れ日をとらえたショットなどは美しいものでした。
骨董通りのギャラリーストークスでは服部一人「Days in Africa」。現地で何年も暮らして撮影したという力作。アグファの印画紙がなくなると知って買い占め、冷凍保存しておくほどのこだわりを持つ作家です。
天気が良いので六本木通りから渋谷を通り越し、池尻大橋のモノクロームギャラリーレインまで歩きました。泉大悟 「Gelatin Silver Print」 展。おもにヨーロッパの街角でとらえた光が主役です。静謐なイメージはハマースホイを思わせるものもあり、楽しめました。
ギャラリーで道順を教えてもらい、さらに下北沢までも歩いてみました。表参道から通算すると60分以上は歩いたことになります。一日中マスクを着けていても、さわやかな気候のおかげで気持ちよく歩くことが出来ました。




 


2020年10月18日日曜日

浪漫の系譜 梅野亮展

 写真展用のプリント作業で暗室に入っていると、旧会員のYさんから展覧会の図録が届きました。梅野亮という未知の画家の展覧会で、東御市(とうみし)梅野記念絵画館という、長野県の上田に近い美術館で来年1月まで開催中とのことです。

添えられたお手紙によると、この画家はYさんの高校時代の親友で、「人生で唯一天才だと思った」人だそうです。図録に見る肖像画の多くは青い目を大きく見開き、どこか遠くを凝視しているようです。
Yさんは写真のみならず美術史にも造詣が深く、しゃべりだすと機関銃のように豊富な知識がほとばしる人です。そのYさんをして天才と言わしめた画家の作品は素晴らしいものでしょう。
展覧会には関連の作家も展示されており、美術には疎い私でも聞き覚えのある有本利夫や小杉小二郎といった名前が見えます。そしてYさんの写真も!

信州の秋はこれからが見ごろでしょうか。

2020年10月14日水曜日

Gallery Y

ゾーンシステム研究会のメンバーが時々グループ展を開かせていただく、つくばの Gallery Y を訪問しました。現在は”-shirt”という個展を開催中です。

ビルの2階で、予め展示内容を知っている人が訪れるようです。

衣服についてはあまり(というか全く)知識もないのでうまく表現できませんが、既存の常識にとらわれないというモノづくり(縫製もすべて自分で行っているそうです)にははっきりとした自己主張があります。https://designlablights.com/

現在は世界的なブランドになっているデザイナーもこんなところから出発したのかな、などと想像してしまいます。実用品の枠を超えた立体作品として鑑賞しました。


ギャラリー入口。

ディスプレイ用の枠も自作だそうです。

素材や工法を組み合わせることで、既存のシャツというイメージを超えた何か、になっています。

2020年9月30日水曜日

The Base Point

研究会の写真展も11月から始まるので、印画紙などを買い求めに神田のThe Base Pointへ。このお店は6月にオープンしていたのですが、今回初めてです。

常用のEagle VCFB 半切サイズの在庫を予め電話で確認しておきました。場所は神田駅から徒歩数分の至便な場所です。

入口は売店、いやバイテンのカメラが目印。

併設のギャラリーでは写真展を開催しています。ハガキの上に置いたのはオマケでもらったバッジです。

路面店なので明るく、とても入りやすい雰囲気です。 銀塩写真の復活が進むことを祈りつつ後にしました。






2020年9月1日火曜日

ファインプリント展 撤収

  8月26日にオープンした「ファインプリント 銀塩写真の魅力」展も31日で最終日となりました。コロナに加えて猛暑という悪条件のなかで、来場いただいた方も例年の数分の一という結果になりましたが、それでもありがたいことに数点のプリントをお買い上げいただきました。

 写真をコレクションすることはまだあまり一般的とは言えないでしょうが、気に入ったイメージを手元において愛でることはやはり楽しいことです。のみならず、出展した人の励みにもなります。

 時節柄オープニングパーティも打ち上げもできませんでしたが、また来年も開催したいということになりました。



2020年8月25日火曜日

ファインプリント展開催

 4月の開催予定が緊急事態宣言で延期となった「ファインプリント 銀塩写真の魅力」展が開催の運びとなりました。展示準備は換気を良くしたために、都内上空を頻繁に飛ぶことになったジェット機の騒音を聞きながら行いました。

多くの方に見てもらいたいのですが、はたしてどうなりますか・・・

2020年6月19日金曜日

アサヒカメラ休刊

つい先日、アサヒカメラの休刊を知り、発売早々に入手しました。
休刊の理由には広告費の激減も挙げられていましたが、この号をみるかぎり、ほとんどカメラの広告が載っていません。一雑誌の終焉というよりは、フィルムかデジタルかを問わず、カメラ業界そのものの退潮を象徴するようです。少なくとも35年前、「カメラ毎日」のHelloGoodbyeのときには想像できなかった状況です。
最後の特集は「構図は名作に学べ!」 アダムスの作品も例に取り上げられています。
日本の写真の「本流」ともいえた存在が消えることに寂しさを感じると同時に、もっと自由な写真の楽しみ方が広がっていくよう期待したいところです。

2020年5月26日火曜日

現像液

永年使ってきた印画紙用現像液「中外 マイ・ペーパーデベロッパー」のストックが尽きたので注文しようとしたところ、なんとディスコンになっていました。しかし「後継品があります」という表示につられてみると、メーカー名は違うものの、同じような「Silverchrome BW paper developer」がありました。
さっそく取り寄せてみると、ボトルの形も使用方法(希釈率など)も同じです。多分銘柄だけが変わったのだと思いますが、なかなかむずかしいご時世ですね。

2020年4月26日日曜日

アンセル・アダムスの記事 2

ゴールデンウィーク(NHK辞書では大型連休)改めステイホーム週間となり、外出もためらわれるご時世ですが、先週の記事に続き、日経ではアダムスが取り上げられています。今回は自然保護活動やマンザナー収容所などのエピソードが主となっていますが、2回で終わるのは大変もったいない内容です。

今回大きく取り上げらているのは「月とハーフドーム」ですが、手元にある8×10のスペシャルエディションと並べると、原寸で印刷されていることがわかります。(新聞印刷の方が黒が締まって見えますが、これは額に入っているアクリルのせいです。)
新聞の複製を改めて眺めると、いままであまり気にしていなかった右手前の闇に浮かぶ樹々もコンポジションとして極めて重要だと気付きました。

紙面で最後に紹介されているのはゆで卵や牛乳瓶を撮った「静物」。さすがに殻のついた卵と剥いたものの質感の違いを新聞で再現するのは少し厳しいようです。

LensWorkのBrooks Jensen はPhotographing at Homeと題したブログで、歴史上重要な写真作品の多くは自宅で撮影されたもので、身近な人やものを観察して作品にすることは、パンデミックの時に限らず常に大切なことだ、と指摘しています。
https://vimeo.com/405170335/4bbcb4523a


2020年4月23日木曜日

アダムスの命日

後から気が付いたのですが、今年の4月22日はアンセル・アダムスの没後36年にあたりました。仏教でいうところの三十七回忌ですね。

アダムスが亡くなった1984年にはもちろん民生デジタルカメラは存在していませんでしたが、ソニーがスティルビデオを発表したのは1981年でした。当時はフィルムのいらないカメラとして話題になりましたが、アダムスは来るべき電子画像の時代を予見していたとしても不思議はありません。
The Negative の序文(1981年)には「私は新しいコンセプトとプロセスを心待ちにしています。電子画像が大きく進歩することを信じています。それは固有の特徴を持つでしょうが、アーティストや職業写真家は理解し、コントロールするように努力するでしょう。」と書いています。


ところで先日、サフィ・バーコール著「ルーンショット」という本を読みました。(三木俊哉訳 日経BP)経営戦略の本で、写真とは直接関係がないのですが、興味深いことに、アダムスも登場します。
ポラロイドを発明したエドウィン・ランド博士とアダムスの交友は有名ですが、ランドは誰よりも早く、軍事技術としてのデジタルカメラ技術に注目していたというのです。だとすると、アダムスは私たちの想像以上に電子画像技術に詳しかったのではないか、そんな空想も膨らみます。

2020年4月20日月曜日

アンセル・アダムスの記事

4月19日(日)の日経朝刊にアンセル・アダムスの記事が載っているという情報を会員のKさんから聞き、あわててコンビニに走りました。新聞を一部だけ買うのに初めてクレジットカードを使いました。

記事は「美の粋」という両面見開きのシリーズで「偉大なる風景写真 アンセル・アダムス(上)」。記者はカリフォルニアのカーメルにあるアダムスの暗室まで取材するという、近年まれな本格的な紹介です。有名な「ヘルナンデスの月の出」を例に、アダムスがいかにプリントづくりに時間とエネルギーを使ったかをていねいに書いてあるのでとても参考になります。

そういえば4月18日の朝日書評欄では「永遠のソール・ライター」が取り上げられ、評者はアプリなどによって「写真」が「光の絵」であることを多くの人が認識するようになっていると指摘しています。
日本ではドキュメンタリーが写真の本流という意識がいまだに強いようですが、テクノロジーによってそのような傾向も変わってくるのでしょうか。

研究会の有志でアダムスの暗室を訪れたのは2005年のことで、もう15年も経ちました。新聞で見る限り今も変わっていないようです。
日経の来週の記事が楽しみです。

2020年4月1日水曜日

ほぼ無観客展示

研究会とは関係のない写真展ですが、職場のOB会写真展に参加しました。
会期直前に自粛要請などがあり、案内を出した方々にもあわてて連絡を取るなどしましたが、結局は主催者もほとんど在廊しない状態での開催となりました。


今日の撤収日に数えると、それでも数十名にはご来場いただいたようです。
同じ会場ではこのさきGW過ぎまでの展示はキャンセルとなっています。

なんとも異例ずくめの写真展でした。

2020年3月28日土曜日

会員Mさんのご逝去

昨日、ゾーンシステム研究会でも最古参といえるMさんが突然亡くなったというお電話を受け、慌ててご自宅に伺いご焼香しました。
最古参とはいえ70歳そこそこで、本当に早すぎます。

Mさんは細身のお体でエネルギッシュに世界中を旅し、写真を撮ることをなにより楽しみにしておられました。そのしなやかな視点にはいつも新鮮な美しさが宿っています。

数年前に譲っていただいた写真は拙宅のリビングに置いて楽しませていただいているのですが、改めてお花と共に飾って故人を偲んでいます。

2020年3月22日日曜日

静かな花見

東京では史上最早の桜開花ですが、人混みを避けて近所の川沿いを歩いてみました。例年は多い外国人も今年はほとんど見かけません。
撮影は手製の612カメラですが、三脚の代わりにキャリーカートに取り付けてみました。さすがに不安定で少しでも触るとぐらぐらしますが、レリーズでシャッターを切れば一応実用になります。街中で三脚を使うとうるさく言われることが多いので、すこしでも目立たないようにするための工夫です。水平を出すためにはレベリングユニットを使っています。
この612カメラは昨年、海外旅行のために自作したのですが、ファインダーも適当だったので改めて15mm用のビューファインダーを中古で奮発しました。ぶらぶら歩きながら1本6コマ撮影し、早速かえって現像しました。





2020年1月16日木曜日

3→2→1→4

年が明けてからしばらくたってしまいましたが、今年のギャラリー巡りは銀座3丁目から始まり、2丁目、1丁目へ進んで四ツ谷に向かいました。

銀座3丁目 キヤノンギャラリー銀座 近藤太智写真展 「フランス・イギリスの橋を旅する」(1月15日まで 2月に大阪で展示)
築百年はざらで、中には二百年もあるヨーロッパの鉄の橋を旅した写真展です。5千万画素のカメラでとらえた構造物を巨大なプリントに仕上げてあると迫力もさることながら、時の流れもリアルに感じることが出来ます。

銀座2丁目 写真弘社ギャラリー・アートグラフ 「デジタルモノクロームの世界」展
(1月16日まで)
国内で唯一ラムダによりバライタ紙にデジタルデータをプリントすることが出来るそうで、豊富な作例が並んでいます。使用できる印画紙は専用で持ち込みはできないということでした。デジタルネガも不要で、大伸ばしもできるのが魅力ですが、お値段も結構なもの。
キャビネサイズのテストプリントは半額で受けてくれるので、いつかは試してみたいと思いました。


銀座1丁目 富士フォトギャラリー銀座 小木曽光利 「8000m峰 14座」展
(1月16日まで)
大先輩の個展です。70歳を過ぎてから8000m級の山々の撮影に挑戦しているのには頭が下がります。
四ツ谷 ポートレートギャラリー 水谷たかひと「PRELUDE」展
(1月22日まで)
「スポーツ報道写真展」とあるので、観る前から想像がついてしまうのですが、誰もが知っているスーパースターの決まりポーズだけではなく、プレーに臨むアスリートの緊張感なども表現しています。タイトルに「報道」の文字を入れないといろいろ制約もあるそうで、写真の技術とは無関係な奥深いこともあるということでした。今年はオリンピックイヤーで、報道席カメラの白黒対決にも興味がわきますが、この世界ではまだミラーレスの出番はないそうです。

で、一日の終わりは少し遅めの新年会(研究会ではありません)となりました。