研究会の写真展も会期半ばとなりますが、季節柄あちらこちらで展覧会が開かれています。
秋の国展
まず上野の東京都美術館で11月8日まで開催の国展。いつもながら膨大な量とバリエーションです。それぞれの作者が作品に込めた思いに想像をめぐらすのも楽しみです。
このところ急に気温が下がり、西洋美術館前の銀杏も色づいてきました。良い考えが浮かぶでしょうか?
神保町の竹尾 見本帖本店
研究会の写真展も会期半ばとなりますが、季節柄あちらこちらで展覧会が開かれています。
秋の国展
まず上野の東京都美術館で11月8日まで開催の国展。いつもながら膨大な量とバリエーションです。それぞれの作者が作品に込めた思いに想像をめぐらすのも楽しみです。
ゾーンシステム研究会のメインイベントである写真展の展示作業を11月4日に行いました。
三連休最終日の午後、ギャラリーE&Mに集まった有志が協力して作業を行います。まずは中島代表のプランに従ってフレームを並べて検討。強烈なパースと、闇から浮かぶ光がまぶしく感じられます。紙の白さが強烈な光に思えることが、白黒写真のだいご味でしょうか。
このところ東陽町で開催するのが恒例となった東京8×10組合連合会写真展にお邪魔しました。会場は江東区文化センターで、広々とした開放的な空間です。お隣ではコーラスのリハーサル?があり、ときどき妙なる歌声が聞こえてきます。
展示作品はバラエティーに富んでおり、オーソドックスな銀塩写真からサイアノタイプ、実験的なものまで様々ですが、なにより女性や初心の方の出展が多いのに感心します。8×10で初めて撮ったという作品や、まだ二年目だという方など、大判写真の世界に踏み込む方が多いのには勇気づけられます。田村写真の田村さんとお話をしていると、フィルムの値段は最近高騰しているというが、何十年も昔と比較してそれほど変わっていないのではないか、という見解でした。ラーメン一杯とフィルム一本の値段は、時代が変わってもほぼ同じというお見立てでした。
ご近所の商業ビルに中古カメラ店がオープンするという情報があり、土曜日にプラプラと出かけてみました。
小さい店かと思っていたら、結構広いフロアを使っています。まだプレオープンで販売はしていないのですが、ざっと眺めると当然ながら35ミリ一眼が多いようです。中にはヤシカやリコーの2眼レフもちらほら。ペンタックス67なども少しはありました。しばらくして本格的に?営業が始まったらまた覗いてみたいと思いました。
ちなみに同じフロアにはLPレコード専門店もあり、けっこうアナログな世界が持ち直してきたようです。
今年も半蔵門のJCIIクラブ25でフォトグラフィック アート アジアの展示が始まりました。(去年の様子)
例年通り、数名のアーティストが色々な技法でご自分の作品を発表しています。ソルトプリント、ゼラチンシルバープリントなどもありますが、インクジェットプリントが大勢のようです。
今年はざっと見まわして人物写真がないようです。静謐な風景や静物などが多く、技法の多様さにも拘わらず、印象には統一感があります。
1フロアを使った展示なので、イベントコーナーでのプレゼンテーションがいやでも耳に入ってきます。
ギャラリーE&M西麻布で始まった 「土居慶司 オイルプリント写真展」にお邪魔しました。
パンフレットによれば「19世紀末に始まったピクトリアリズムのひとつであるオイルプリント」を用いたそうです。お話をきくと、水彩画用紙にゼラチンを塗り、感光性を持たせてネガを密着焼きしてから油性絵の具を塗布するとのこと。絵の具の塗り方で仕上がりも変わり、極めてシャープな描写から、ソフトな表現まで多彩です。多くの古典技法と同様、紫外線で密着焼きするのに拡大ネガが必要ですが、リスフィルムがいまでも入手可能(しかも安い!)という情報もいただきました。
クラシックな建物や風景を眺めていると、迷宮に迷い込んだような錯覚にもとらわれます。案内状にある写真は、古城の塔かと見えたのですが、実は何の変哲もない杭ということで、まさに土居マジックです。
いままでも多くの技法にチャレンジされてきた土居氏の、あらたな境地に触れました。
会員の橘田さんが写真部に出展しておられます。開場後の比較的早い時刻に伺ったのですが、GW最中という事もあってにぎわっていました。ゼラチンシルバープリントの作品はほかにも何点かあり、ほっとするのはこちらが古くなったせいでしょう。
出展作にも傾向はあるようで、かつてはコンピューターで手を加えたことを強調するような作品が目立ったのですが、最近は落ち着いてきたという印象です。言葉は悪いかもしれませんが、新しいおもちゃで遊ぶのにも飽きてきた・・・ということでしょうか。
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会員のTさんから画像を提供いただきました |
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3Dプリンタでつくりました。 |
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柔軟性があるのでカメラにはいります。 |
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校舎の面影が残る入口 |
鈴木さんとその作品 |
会場の様子 |
このギャラリーを訪れるのは何と5年ぶりでした。
サルーン氏は写真家であり、プリントアーティストでもあったひとで、2020年に77歳で亡くなったそうです。2003年4月には研究会で講演会を行い、プリントアーティストとしての作品(ロベール・ドアノー、ジャック・アンリ・ラルティーグ、エドゥアール・ブーバといった写真家のプリント)や、自身の作品を多く見せてもらったことが記憶に残っています。その時の記録は会報26号に書かれています。今回の展示は自身が撮影・プリントした作品のみで、「愛おしい日常」というタイトルにもあるように、ほほえましい一瞬をとらえた、いかにもフランス人のエスプリを感じさせるものです。
きがつくと、こういう街角のスナップショットは極めて撮りにくいご時世になってしまいました。
日本写真芸術学会の「写真プリント研究会」を聴講してきました。(2024年2月3日 東京工芸大学中野キャンパス) 正式なタイトルは「デジタルモノクロ銀塩バライタプリント(通称ラムダバライタ)について」というものです。
イタリアのダースト社製ラムダプリンターは、銀塩印画紙にレーザー光線で露光するもので、カラープリントの機械だと認識していましたが、バライタ印画紙を使えばデジタル銀塩モノクロバライタプリンターとなるわけです。印画紙は50インチ幅のロールなので、この幅のプリントを作ることができます。なお、現像から定着、水洗は大きなトレーで手作業で行っています。印画紙がパンクロなので、現像は全暗黒が必要とか。
会場では広川泰士氏のTimescapesの作例などが展示され、いろいろとお話を聞くことができました。このシリーズは砂漠の岩と星の日周軌跡を捉えたものですが、一晩では露出が終わらず、翌日にかけて撮影することもあったそうです。光線漏れや蛇腹の内面反射などがあり、その補正をラムダのオペレーターに伝えるのも苦労したとか。
氏は20×24までは自分で引き伸ばせるが、それ以上はラムダで出力することになるとおっしゃっていました。
私が最も気になったのは、PCのモニターで見るデジタル画像と、ラムダで出力するプリントの調子をどのようにマッチングさせるかでしたが、オペレーターの方に質問すると試しプリントをみて調整するという、極めてまっとうなお答えでした。
50インチの巨大プリントを作る機会は私になはいと思いますが、もしそのような作品ができたら試してみたいものです。
本書の冒頭では森山大道を例に、なぜその写真が「有名」なのか、そして最後には杉本博司の海景がどうして評価されるのかなど、写真作品の価値についての考察がスリリングです。
私は著者についてあまり多くを知りませんでした。数年前に家の近くの「ブックオブスキュラ」という写真専門の書店で、tokyo nature photo という図録を求めたことがあるだけです。写真と見開きに配置された短文を改めてよみかえしてみると、作品創りにはコンセプトを言語化できることが大切だと思い知らされました。
「なんでもないものの変容」とサブタイトルのついた展示を観ました。(松濤美術館 2024年2月4日まで)
アジェや、シュルレアリスムから影響を受けた戦前の前衛写真をはじめとして、戦後の大辻清司、牛腸茂雄などが並んでいます。今年が生誕百年となる大辻と、その教え子である牛腸の作品がメインとなっているようです。
わざわざ「前衛」とカッコに入れたのは、とくに牛腸をそう呼ぶのに違和感があるからでしょうか。
大辻が名付けたという「コンポラ」は「プロヴォーク」と並んで1960~70年代の現象でしたが、「前衛」という戦闘的な言葉とは相いれないように思えます。
「なんでもないもの」を何でもないように表現するのは、意識的に無意識を装うような努力が必要なことなのでしょう。
ぼんやりとそんなことを考えながら美術館を出て、師走の渋谷の街を歩くと、見慣れた街がどんどん変容していく様を目の当たりにします。
アイデムフォトギャラリー シリウスで開催した写真展も、12月13日にぶじ終了しました。
今年の展示では、作品のほかW会員が考案した「ビューイングフィルター」を新たに販売して好評でした。
「ビューイングフィルター」は、ゾーンシステムで大切な「ビジュアライズ(撮影するときに、プリントした写真がどのように見えるかをあらかじめ考えること)に便利な道具です。市販品はラッテン#90フィルターを使い、これを透すと実景の色彩が弱められ、白黒プリントに近いイメージで見られるというものです。しかし最近は極めて高価で入手しづらくなっていました。小伝馬町 Roonee247ファインアーツで終了間際の写真展を観ました。
題材にふさわしくやわらかいトーンのプラチナプリントで、ブータンの寺や、そこで祈る子供たちを捉えています。
こちらを見つめる子供たちの表情は、日本の原風景といってもよいほど親しみがもてるものばかりでした。写真家の前でしばらく緊張し、撮り終わってからはほっとする様子が想像できるようです。